お笑い芸人・野沢直子。ミュージシャンや映像作家としても活躍する彼女が先日出版したのが、自伝的小説『笑うお葬式』です。奇抜なアイディアで事業の成功と失敗を繰り返し、愛人をあちこちに作っていたという、破天荒で、でも魅力あふれる人物だった彼女の父親との思い出が綴られた本書には、野沢家の大切な記憶がそこかしこに描かれています。全編笑いに包まれていながらも、涙なくしては読めない本書は、まさに小説を超えた小説と言えるでしょう。

今回は、そんな魅力にあふれた小説を出版された野沢さんにインタビューし、本作を書いた理由や今の心境、また今後の作家活動(?)についてなど、気になることを聞いてきました!

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ーーホントにすごいお父さんですね~!

ちょっとアタマがおかしいですよねぇ(笑)。

ーー小説にこんな感想を言うのはおかしいと思うんですけど、ホントに小説に出てくる架空の登場人物みたいですね。

でもホントに1ミリも脚色せず、全部実話で……ウソみたいな実話ですよね。というより逆に、考えようと思ってもなかなか思いつかないオチを用意してたなっていう。

ーー本作はもともと2017年3月に『文藝芸人』という雑誌にエッセイとして掲載されたそうですが、そのエッセイは掲載用に書かれたというよりは、すでにあったんですよね。

そうですね。父が死んでから2~3カ月経った頃に、ホントに自分用に、記録っていうか……やっぱり「タイにもう1家族いた」っていうのが衝撃的だったので、それをちょっと自分の中で整理しようと思って、それで書いてあったんです。で、しばらく放置してたんですけど、『文藝芸人』のお話をいただいたときに「あ、あれがあるな」と思って、そのまま全然手直しもせずに送ってしまって。そうしたら、それがそのまま掲載されることになったんです。

ーー自分用とは言いながら、どこかで読み手を意識されてたりはしたんですか?

う~ん、潜在意識の中ではちょっとあったかもしれないですけど、そのくらいで、ホントに自分に対して書いていたというか、書いている中で色々整理しながら、逗子に行った時に考えてたことなんかを残しておきたかったんですよね。

ーー本書に出てくる、あの、ちょっと不思議な逗子の1日のことですよね。

ホントに不思議でしたね。いろんなことをワ~~ッっといっぱい思い出した日で。「あれがあったからこうだった」とか「ウチの両親ってよく考えたらすごかったんだ」って思ったり、いろんなことを思い出したり、それらがパッとつながったりして、それも残したかったし……。でもあとはやっぱり「(子どもが)もう1人いた」というのが衝撃的で……(笑)、その瞬間をやっぱり記録として残しておこうと思って。
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ーーそのエッセイを改めて小説にされたのは、出版社の方からお話があったそうですが。

そうですね。『文藝芸人』に載せたエッセイを読んでくださった方から意外と反響をいただいたというか「他にもいろんなお話を聞いてみたくなりました」みたいな感想を言っていただいたこともあって、分量としては結構多かったんですけど、でも意外と、自分のことだったので面白く思い出しながら書けました。

ーーエッセイと今回の小説のいちばんの違いはどこですか?

エッセイプラス書き足しという感じなので、全面的に書き直したわけではなくて、要素を足していったんです。といっても、小説の方はエッセイの倍以上の分量があるので、だいぶ書き足しました。でも、自分の話だからということもあるけど、一度書き始めたら書きたいことがいっぱい出てきちゃったし、書けば書くほど「あれもこれも」ってなっちゃいましたね。

ーー気持ちを整理するために書き始められたということですが、実はその前に、この小説にも出てきているように、お父様が亡くなられる半年ほど前にすでに自伝的小説を書き始められていたそうで。

そうですね、それは偶然じゃなく虫の知らせだったんじゃないかと思うんですけど。ちょうど父が亡くなる年の頭ぐらいに書き始めてたんですけど、そしたら春頃に弟から「お父さんの具合が悪くて……」みたいなメールがあって。その時は全然まだ虫の知らせなんて思ってなかったんですけど、あとから考えると、タイミングが……って。

ーーその小説と、今回の『笑うお葬式』は、野沢さんの中で同じような意味合いを持つものなんでしょうか?

そうですね。「書く」って不思議で、自分で忘れてたことを思い出したり、書きながら発見したりすることがすごく多くて。だから書くことが好きなんだろうなと思うんですけど。私の母親は糖尿病を患っちゃって、それで早くに亡くなっちゃったんですけど、思い出すとやっぱり、顔では笑ってても、父親のストレスが多くて、それで甘いものを食べてたんじゃないかって思うところがあって……(笑)。それで乗り切ってたんじゃないかなって。前に書いていた方の小説は、そこをちょっとデフォルメというか、「甘いものを食べすぎて巨大化する」っていうことにしてみようと思って書いてたんですよね。あとはやっぱり、『笑うお葬式』にも書いてるんですけど、ホントに自分が見たことだったのか、それとも、親が言ってたからその想像で残ってる記憶だったのか、大人になった今では区別がつかなくなっちゃってる部分がいっぱいあって。その部分を書いてみたかったというのもありました。

ーーそこはでも、書いてもどっちかはわからなかったんですか?

結局どっちかはわからなくって、未だにその真ん中ぐらいの感じですね。でもやっぱり、借金取りが来た時、私起きてたんじゃないかな、とか、その時やっぱり怖かったから、なんか面白いこと考えてようとか思ってたんじゃないか、って思ったり。

ーー書き終わった時は、書く前に比べて心境の変化はありましたか?

ありましたね。活字で見ると、自分が考えてたことがすごくはっきりするし、「どうしたらいいのか」っていう解決法もすごくクリアに見えるし。で、やっぱり「親をいつまでも恨んでてもしょうがないんだ」「もう自分で前に進まなきゃ」っていう方向にちゃんと進むし、一種セラピーみたいな感じというか。

ーーなるほど。ところで、野沢さん自身、芸人として大成功している真っ最中に全てを捨てて渡米されたじゃないですか。当時、それをカッコいいと思ったんですけど、そういう、人生攻めの姿勢というか、チャレンジ精神旺盛というか、そういうところがもしかしたらお父さんに似てらっしゃるのかな?と思ったんですが、自分が父親に似てると思うところはありますか?

影響はやっぱすごいあるんですよね。背中を見て育っているので、「神様に頼るな、信じられるのは自分だけだ」とか、そういう考え方には影響受けてると思うんですけど、でもやっぱり「あんなに頭おかしくない」って思っちゃって……(笑)。「似てる」なんて勘弁してもらいたいっていうか、「私はもっとマトモだ」っていう……ちょっと考えられないですね、自分では(笑)。
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ーー(笑)。

娘(総合格闘家の真珠・野沢オークライヤー)の試合を見ている時に「なんだろうこの感じ。……あ! お父さんだ」みたいなことはすごくあったんですけど、自分とはつなげられないというか、「あんなじゃない」って思ってるんですけど。でもはたから見るとやっぱりちょっと似てるのかなぁと思ったり。自分ではわからないですね。

ーーところで、以前から小説を書かれるのが趣味だそうで、2010年に1冊本を出されてます(『アップリケ』)が、他にも何冊か書きためていらっしゃるんですか?

あ、結構あります。長編で書いたのは『アップリケ』が初めてなんですけど、その前に映画(ショートフィルム)を結構撮っていて、脚本を書いていたので、その時期ぐらいから書くのが好きになって。そのあとも何本か趣味で書いてました。

ーーそれは出版する予定はないんですか?

特にないんですけど、もしそんな機会があれば嬉しいですね。今は『笑うお葬式』を書いたばかりなので、ひと段落というか、何も書いてないんですけど、そのうちまた小説を書いてみたいなぁとは思います。

ーー本作をどんな人に読んでもらいたいと思いますか?

最初は自分用に書いていたので、ターゲットとか全然考えてなかったんですけど、出すにあたって、親子関係でうまくいっていない方とかに読んでいただいて、「あ、こんなひどい家もあったんだ」っていう……(笑)。「ウチなんかまだまだいい方だ」って思ってもらえたらいいな、なんて思ってたんですけど。

ーー辛い状況でもポジティブに考えられそうですよね。

それがホントにいちばんいいなと思ってて。上を見るのもいいですけど、時に下を見て安心するなんてこともあるじゃないですか(笑)。そういう風に思っていただいたらいいなと思ってたんですけど、先ほど前の取材中に、「子育てにすごく役に立つ」っていうか「励まされる」みたいな感じのことを言っていただいて。私もそれは新発見だったんですけど、「あ、そういう風に読んでいただいてもいいのかな」と、30分ぐらい前から思ってるんですけど(笑)。

ーーでも確かに、お母さんがずっと笑顔でいらっしゃったっていう、母親のプレゼン次第で子供の不幸感というか、幸福感が変わってくるっていうのは「ホントにそうだなぁ」って思いました。

そっかぁ、それで子育て本にねぇ、なるほど……(笑)。でもそれはホントにそうだなと思って。あの状況で嘆いてなかったのがすごいなぁって。

ーーもしかしたら陰で甘いものをたくさん食べてらっしゃったかもしれないですけど(笑)。

私も、甘いものを食べてがんばってたんじゃないかと思ってるんですけど(笑)。でも、自分が親になってみると、やっぱり子どもの前でいつも笑ってるって結構大変というか、自分の感情を置いといて、普通に接するって意外と大変なことで、ホントにすごいなというか「よくやってくれたなぁ、あの状況で」と思います。だから、そう考えると「子育て本でいいのかな?」って。30分前からの発見ですけど(笑)。

ーー(笑)。では最後に、これから本を読まれる方にメッセージをお願いします。

もしも親子関係がうまくいってないとか、家庭内が荒れているとか、そういう方がいらっしゃったら、この本を手にとっていただいて、「これよりはマシだな」と思っていただければ幸いです。

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笑えて泣ける小説『笑うお葬式』。ラスト、涙なくしては読めないシーンの連続で、感動のまま終わりを迎えるかと思いきや、最後のオチはなんとも野沢直子らしいというか、芸人らしいオチとなっています。その感想を本人に伝えると、爆笑したあとで「でも、あれが父親らしいって思ったんですよね」と笑顔で話してくれました。
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【野沢直子】

Source: よしもとニュースセンター

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