財務次官の“セクハラ”辞任、新潟県知事の“買春”辞任、タレントによる未成年女子への強制わいせつなど、セクシャリティにまつわる騒動が相次いでいる。

セクハラを含めた性暴力は日本に突出して多いわけではないが、ヨーロッパから見ると「日本人のセクシャリティへの向き合い方」は少々風変わりに映るようだ。そのことを考える時、「性教育のあり方」はひとつの重要な要素であろう。

「週プレ外国人記者クラブ」第116回は、ヨーロッパにおける性教育をリードする国のひとつ、ドイツ出身のコラムニスト、サンドラ・ヘフェリン氏に話を聞いた──。

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―まず、福田淳一・元財務次官のセクハラ事件のニュースを聞いた時、どう思いました?

サンドラ 「胸触っていい?」とか「手縛っていい?」とか、どう見ても露骨なセクハラ発言を官僚のトップである人物がしたことに驚きました。ドイツにもセクハラはあって、2013年には当時FDP(自由民主党)の幹部であったライナー・ブリューデレ議員によるセクハラ事件が大スキャンダルになりました。

同議員は『シュテルン』誌の女性記者に対し、彼女が政治に関する質問をしても取り合わず、「キミはいくつ? 28歳くらい?」と尋ね、彼女がそうですと答えると「そうだろう。私にはよくわかる。私はキミの年代の女性とは経験が豊富だからね」と言ったり、議員が彼女に出身地を尋ね、バイエルン州のミュンヘン出身だと答えると「そうか。キミの胸だとディルンドル(胸元が目立つデザインのバイエルンの民族衣装)もグッと大きく膨らむだろうな」などと言ったのです。同席していた広報官の女性が後に間に割って入り、女性記者にも謝ったんですね。

このセクハラが起きたのは2012年のことですが、1年後の2013年に女性記者がこのことを記事にすると、大スキャンダルになりました。メルケル首相も「政治家と記者の間において、プロとして敬意ある関係を支持する」とコメントを出したほどでした。

このブリューデレ議員に比べると、福田次官のセクハラ発言はもっとストレートで酷いものですよね。それなのに、直属の上司である麻生財務大臣は「セクハラ罪という罪はない」と擁護するような発言をしましたし、当初は財務省も「被害女性が名乗り出るべきだ」という信じられない対応をしていました。本来なら、安倍首相が「こんなことは決してあってはならないことだ」くらいのコメントをすべき大事件のはずです。

ドイツなら、麻生大臣は今回の擁護発言で政治生命が終わっていたことでしょう。でもなぜか日本だと「あの人は、ああいうキャラだから」で通ってしまう。石原慎太郎・元都知事も同様で「閉経して子供の産めない女が長生きしてもムダ」という発言がありましたが、世間には「石原さんならしょうがない…」というような反応も多くありました。

ドイツやヨーロッパでこのような差別発言があれば、女性たちから物凄い勢いで袋叩きにあうことは間違いありませんが、日本ではウヤムヤになってしまう。この根底には、被害者であっても女性には「品」が求められ、年長の男性に対しては非常に甘いという風潮があると思います。

もうひとつ、福田次官のセクハラ発言で思ったのは、彼にとって若い女性というのは全員、ホステスとかキャバクラ嬢にしか見えないのではないか、ということです。そうでないと女性記者に対して「触っていい?」などという発言をするはずはありません。

本来なら官僚と記者という関係ですと、直接仕事に関わること以外でも雑談の中で様々な有益な会話ができるはず。でも福田次官は「若い女が来た」としか見ていなかったのではないでしょうか。「性」を過剰に意識している結果、生まれた発言だったのだと思います。

―“買春”で辞任した新潟県の米山知事についてはどうですか?

サンドラ 出会い系サイトで知り合った女性と付き合ってお金を渡していたということですが、ちょっと気の毒な気もしますね。女性の彼氏がそれに気づいて腹を立てて週刊誌にリークしたそうですが、その彼氏は別にして、知事の場合は他の誰も傷つけていませんから。性に関する事件では、被害者が受けた傷に向き合うことが大事。その意味では、仕事上の利害関係や上下関係を利用した上でセクハラをした福田元次官のほうがはるかに悪質だと思います。

―元TOKIOの山口達也氏の事件についてはいかがでしょう?

サンドラ 報道を見ていると、自分の番組に出演していた未成年の少女を自宅に呼び出してキスなどを迫ったことや、酒癖の悪さという点に注目が集まっていますが、ヨーロッパならそれ以外に「40代の男が10代の少女に興味を持ち、手を出そうとした」という時点で「気持ち悪いロリコン中年男」として大バッシングを受けるでしょうね。

ドイツでは、例えば14歳同士のカップルの交際に関しては、親も周囲の大人も微笑ましいものとして受け入れます。でも、14歳と20歳のカップルだと眉をひそめられます。そもそも14歳と20歳だと性行為は違法ですしね。まして40代と10代となると親と子ほどの年齢差もあって、ヨーロッパだと世間から間違いなく「ロリコンで気持ち悪い」と思われます。

―今回の事件では、「部屋に行ったほうも悪い」という、少女に対するバッシングも見られました。見当違いも甚だしい意見ですが、その根底には未成年の恋愛やセックスに対して抑圧的な風土があるのではと思います。“不純異性交遊”なんていう言葉もあるし、女子中高生が妊娠すると学校から自主退学を強いられたりすることも多いですよね。

サンドラ ドイツでも、未成年に子供が“できちゃった”ことに対する世間の目は厳しいです。なぜなら、しっかりとした性教育をしているので、避妊のこともしっかり教えており、望まない妊娠は防げるはずだという考え方があるからです。

しかし、妊娠したからといって高校を退学させられることはありません。むしろ、10代で妊娠・出産したら、母親は子供のためにも将来は高待遇のきちんと稼げる仕事に就くことが全員にとって望ましいので、良い教育を受ける必要があります。ですから、退学はさせるべきではありません。

高校を中退させられたら高収入の職に就くことはハードルが高くなり、生まれたばかりの子供を抱えて、貧困層になってしまうのは目に見えていますよね。だからこそ、避妊を含め、しっかりした性教育を行なうべきです。

―日本では、性教育に対するバッシングもあり、他の先進国と比較すると遅れていると言われています。ドイツの性教育事情はどうなっているんでしょう?

サンドラ 日本では、性教育を詳細に行なうと「寝た子を起こすことになる」という意見があるようですが、ドイツでは「子供はとっくに起きている」という考え方が共通認識です。州によって多少違いはありますが、どの州でも小学校から教えます。まず1、2年生で妊娠や出産、子育て、そこでの父親の役割について、そして3、4年生で男女の体の違いや、思春期に起こる体の変化について教えます。子供たちが思春期を迎える前に教えて心の準備をさせるわけです。

さらに上の学年になると愛や性、避妊のこともしっかり教えます。私が子供の頃はコンドームやピルについて教わりましたが、今はこれに加えて避妊リング(IUD)などについても教えています。

また、ドイツの「健康教育局」が作成したWEBサイトがあり、若者に愛、セクシャリティ、避妊についての情報を提供しています。他にも、家族支援団体が運営しているサイトでは専門家に質問することができますし、「女の子の面会時間」というサイトでは、産婦人科医が思春期の女の子の質問や疑問に答えています。婦人科の探し方のサイトもあります。親や教師が子供からの質問に答えるのが難しい場合、「こういったサイトがあるよ」と子供に教えます。内容も正確で安心です。

―そういうしっかりしたサイトがあると、いい加減な俗説が書かれたサイトや、アダルトサイトなどで間違った知識を身に付けてしまう危険性は減少するでしょうね。

ところで、オランダはドイツ以上に性教育を開始するのが早く、4歳から教え始めるところもあるとか。ただ、いきなりセックスや避妊について教えるのではなく、知らない大人から「キスしてもいい?」と尋ねられたら、「キスはイヤ。握手ならいい」という風に、肉体的な接触に対して「ノー」と拒否してもいいんだということを子供に教える、と。

サンドラ オランダはヨーロッパの中でも性教育が進んでいますね。欧米はハグやキスなど肉体的接触が多い文化ですが、それを利用してセクハラをする人間もいるので、防止策として教えるという面もあると思います。最近はハグやキスに関しても見直そうという機運が出てきています。フランスの自転車レース「ツール・ド・フランス」で、優勝者に美女が両側からキスするというセレモニーを「性差別を助長する」という理由でパリ市が廃止しようとしているという報道も最近ありましたね。

―このオランダの性教育のように幼い頃から「イヤだったらノーと言っていい」と教えるのは大切なことだと。日本では年長者や目上の人にノーというのは失礼だという文化的刷り込みもあるので、それがセクハラに対してノーと言いにくい空気を作っている気もします。

サンドラ 確かにそうですね。もうひとつ、性教育において非常に大事なことですが、ドイツでは性に関する授業を男女生徒が一緒に同じ教室で受けます。同じ内容の知識を教わることで、思春期になっても女子と男子が互いの性別を過剰に意識することなく、勉強や遊び、あらゆる場面においても自然な形で男女が交流できるようになる。男と女には「性」や「恋愛対象」以外にも人間同士としてたくさんの「つながり」があるということを発見できることが大事だと思います。

男女がお互いに恋人でもセックスフレンドでもなく共通の趣味がある者同士で仲間になる、あるいは職場でも同僚として男女の性を意識することなくお互いを尊重しながら仕事ができるのが理想ですよね。

日本だと職場にもよりますが、なかなかそういうことができていないところもあります。私が昔、通訳として地方の工場に行った時、昼休みに社員食堂に行くと、見事に男性グループと女性グループに分かれていて、男女が混ざって食事をしている人たちはいませんでした。ドイツの職場ではほとんどこういうことがなく、適度に男女が混ざり合っています。学校でも男女のグループが友人として普通に付き合っています。同じバンドが好きだったり、同じスポーツチームのファンだったり。日本だと、どうしても「同性同士のグループ」になりがちです。

立ち遅れた性教育のあり方や、「男女七歳にして席を同じゅうせず」というような“男女を分ける文化”が福田元事務次官のような人を育んでしまったのかもしれません。セクハラ事件の多くは、相手の「性別」しか目に入っていないことが問題の根源なのではないかと思います。

(取材・文/稲垣 收 撮影/保高幸子)

●サンドラ・ヘフェリン

1975年生まれ。ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴20年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから「ハーフとバイリンガル問題」「ハーフといじめ問題」など「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。著書に『ハーフが美人なんて妄想ですから!!』、共著に『ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』『爆笑! クールジャパン』『満員電車は観光地!?』『「小顔」ってニホンではホメ言葉なんだ!?』『男の価値は年収より「お尻」!? ドイツ人のびっくり恋愛事情』など 【関連記事】
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Source: Ameba News

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