<文/山野車輪 連載第37回>

◆LOUD PARK開催見送りにメタラー激震!

 少し前の話題となるが、2006年から毎年開催され、2017年までに12回続いた日本最大級のヘヴィメタル・フェスティバル=LOUD PARK(略称“ラウパ”)が、2018年の開催を見送ることが5月24日、公式発表された。来年以降開催されるかどうかも、まだはっきりしないらしい。

 2006年に千葉の幕張メッセで開催された第一回は、スラッシュメタル四天王のMegadethとSLAYERがヘッドライナーを務めて話題を呼び、その後も、Marilyn Manson、Slipknot、KoЯn、Motley Crue、Judas Priest、Ozzy Osbourne,など、メタラー垂涎のバンドが出演。

 日本のアーティストも、DIR EN GREY、Galneryus、浜田麻里、OUTRAGE、仮面女子などが出演し、ももいろクローバーZや演歌歌手の八代亜紀も飛び入り参加したりしてきた。

 ロック・フェスが盛んな今、なぜ洋楽メタルのフェスが中止になったのだろうか。日本においては、洋楽メタルは衰退しているのか。今年、ラウパが開催されなかった要因について、洋楽メタラーからさまざまな意見が出ている。

①世界的にフェスが乱立したことによるメジャー・バンドのギャランティ上昇

②それに伴うチケット代の高騰

③スポンサーの減少

④洋楽メタラーの興味がベテラン・バンドに偏重し、ヌーメタル以降のバンドでの集客が困難

⑤洋楽メタラーが白人マンセーなことで、国産バンドを使っての集客も難しい

⑥次々と新しいサブカルチャーが生まれ、音楽を聴くという趣味が後退した

⑦親世代は洋楽聴いて育っているが、少子化の進行により、次世代に受け継がれていない

 おおまかには上記の通りだ。「①メジャー・バンドのギャランティ上昇」は世界の潮流だし、「②少子化問題」については日本社会が抱える問題なので、メタラーにはどうしようもない。「⑥音楽を聴くという趣味が後退した」ことも、メタラーに手に負える問題ではない。

 この中で、「④新世代バンドを盛り上げる」ことや、「⑤国産バンドを応援する」ことは、洋楽メタラーの意識次第であろう。だが日本の一部の頑固な洋楽メタラーは、ヌーメタルに対して排他的であり、X JAPANやBABYMETALなどの国産アーティストおよびV系やラウド系アイドルなど日本独自のメタルのサブジャンルに対しても厳しいというのが現状である。

 とはいえ、このような洋楽メタラーの意識を是正することは難しい。メタラーの間では、分かっているリスナーだけで良いという排他的なスタンスが一定の支持を得ているのである。だが、これは洋楽メタルに限ったことではない。このようなタコツボ化したコミュニティはほかにも見られ、やはり似たようなものである。先鋭化を進行させていき、どこかで倒れるのだ。

◆洋楽ロックを聴かなくなった若者たち

 ところで近年、ロックTシャツが流行っているようだが、若者は自分が着ているTシャツにプリントされているロック・バンドのことを知らないケースも少なくないようだ。それらがスタンダードなバンドであるにもかかわらず……。まして、リスナーを選ぶメタルに到達するだろうか……?

 筆者が音楽を聴き始めた80年代は、クラスメイトの多くが洋楽ロックを聴いていた。もちろんメタラーもいた。同級生のほか、兄や姉、学校の先輩、洋楽雑誌、TVやラジオなどで、洋楽に触れたことを契機に聴き始めることが多かった。音楽そして洋楽は、若者の趣味の上位に位置していたのだ。筆者の体感では、洋楽人気は、『週刊少年ジャンプ』(集英社)連載のマンガと並んでいた(アニメや『ジャンプ』以外で連載されていたマンガは、はるか下位だった)。

 しかし現在、若い世代が洋楽メタルを聴き始める入り口は一体どこなのだろう……? 洋楽メタルを聴いている同級生は少ないだろうし、兄や姉、学校の先輩も同様だ。その上、洋楽雑誌およびTVやラジオなどのマスメディアも斜陽化しており、洋楽を拡散できる環境にはない。

 政治・社会問題やスポーツなどはコミュニケーション・ツールとして汎用性が高い。そして20年ほど前から、多くのマンガ・アニメも、コミュニケーション・ツールとして機能するようになった。しかし、音楽はどうなのか。20世紀の頃は、多くの若者がKISSやBon Joviなどを聴き、自分の好きなアーティストについて熱く語り合うことを楽しんでいた。しかし近年、洋楽はすっかり影を潜めている。

 筆者は5年ほど前、知人が集まるパーティで洋楽メタルの話題を振ったことがあるが、「このバカ、何言ってんだ?」みたいな空気が流れた。一般層にとってもはや洋楽メタルは縁遠いものなのだ。Judas PriestやIRONMAIDENですらアウトだろう。ここまで来ると、口コミによる情報拡散も難しい状況と言える。今、音楽を聴かない人からも門前払いされることなく、少しは話についてきてくれるかもしれないのは、X JAPANやBABYMETALなどであろう。

◆「日本人の高いモラル」と「ロックの反モラル」は両立するか

 今年開催されたロシアW杯において、日本の選手がロッカールームを清掃して退出していたことや、サポーターのゴミ拾いが賞賛されたことは記憶に新しい。日本は、他国から賞賛されるほどモラルが異様に高い国なのである。

 そのようなモラル先進国においては、ロック・アーティストらしいヤンチャな武勇伝があっても、決して持て囃されず、逆に単なるDQN(ドキュン)扱いされ、嫌悪されることだろう。昔はカッコイイとされていたヤンキーも、今となってはクソバカの極致である。何にせよ、ロック・アーティストが生きづらいここ日本において、洋楽ロックおよびメタルは、ヤンキーと同じように衰退するのは仕方がないことなのかもしれない。

◆洋高邦低から邦高洋低の時代へ

 何より、洋楽が衰退したもっとも本質的な原因は、欧米文化に対する憧れが消え去ってしまったことにあるのではないか。あくまでも筆者の考えに過ぎないが……。

 戦後しばらくの間、日本には、国産品は質が低く、質の高い舶来品に価値があるとする共通認識があった。日本よりも欧米のほうが先に進んでおり、そこに羨望の眼差しがあった。音楽の場合も同様で、日本の音楽よりも先に進んでいる洋楽を聴くことがカッコイイとされていた。だからこそ筆者は、若かりし頃、カッコイイ趣味を持つために洋楽メタルを選択したという側面も多々あった(そこには、オタク趣味がバカにされていたことに対する反動もあった)。

 さて現在、若者は、洋楽をカッコイイと思っているだろうか? 欧米に対しての羨望の眼差しがあるのだろうか? 情報化社会になったことで、現在の若者は、良い部分と悪い部分を判断できるようになった。他国の政治情勢や民度も知っている。その結果、「欧米にも結構ダメな部分あるよね」「日本の方が全然マシだよね」「日本人のほうが民度高いよね」などと思うことが少なからずあるだろう。もはや、欧米文化に対する憧れがないのだ。必然的に、洋楽に対する興味・関心も失われてしまったと言える。

 もはや洋楽は、今の若者にとっては「俺たちのもの」ではない。あくまでも上の世代のものに過ぎないと言えるだろう。

◆若者にとっての「俺たちの音楽」は何か?

 仮に筆者が今20歳だったら、同世代の友人が聴かない洋楽メタルを聴くことはなかっただろう。おそらくアニソンや声優ソングを聴いていたと思う(笑)。というのも、今の時代はそれらを聴くことが恥ずかしくなく、しかも友人らとのコミュニケーション・ツールとして汎用性が高いのだ。

 そしてもうひとつ、若者にとっての「俺たちのもの」とされる音楽がある。それが、「愛国ソング」だ。

 3年ほど前のこととなるが、湯川れい子という音楽業界の有名人が、ツイッターで「ネトウヨさんは洋楽聴きませんからねぇ」(2015年8月9日付)とつぶやいて、盛大に叩かれた。メディアで活動する立場の者が、「ネトウヨ」というヘイトラベリング造語を使っているのだから、叩かれて当然だろう。このヘイト発言から、洋楽を聴かない者は「ネトウヨ」であり、蔑んでいいという考えも読み取れる。裏を返せば、洋楽を聴く者は左派で尊ばれる存在という考えが透けて見える。

 平成の半ば頃まで、「左派を尊び右派を蔑む」「反体制」というスタンスは、音楽だけに限ったことでなく、日本社会の常識とされてきた。しかしそのスタンスは、上の世代の人口の多さや、左派マスメディアの強大な影響力、戦後からずっと常識とされ続けてきたことから、到底「反体制」と言うことはできず、むしろ「体制」側に転じてしまっていたのである。

 であれば、下の世代…つまり若者は、その「体制」に抗う「反体制」のスタンスを採らざるを得ない。最近起こった「愛国ソング」騒動は、その象徴と言えよう(連載第33回参照)。つまり今の若者にとって、Jポップ・アーティストが歌う「愛国ソング」は、「俺たちのもの」なのだ。さて洋楽に、アニソンや声優ソング、そして「愛国ソング」などのような、若者に必要とされる要素や、若者の心に訴えかける物語が、果たしてあるだろうか……。

◆洋楽市場生き残りの方策はあるのか

 上の世代は、かつて自分らが好きだったものに執着し、新しいものを受け入れない傾向が強い。そして下の世代は、そんな過去のものに付き合わされたくない。下の世代に言わせれば、「上の世代が好きだった洋楽なんて聴きたくないよ」「僕らの文化ではないよ」といったところだろう。日本において洋楽は、政治思想的にも、世代闘争的にも、ウザったい上の世代のものとみなされ、若い世代からは、忌諱されるものになっているような気がしてならない……。日本社会の動きから考えると、洋楽がこの先、息を吹き返すことは非常に困難と言えそうだ。

 とは言え、国内の洋楽市場が、すぐさま絶滅することもないと思われる。フェスティバルという形での開催は行なわれずとも、海外メタル・バンドの単独公演は増えているようだし、上の世代の懐具合は、若い世代と比べれば、圧倒的に豊かである。じわじわと衰退していくだけで、さほど気にすることでもないだろう。

 いずれにせよ、洋楽市場の動向だけを見ても、答えは見えてこない。むしろ、音楽の外の社会の動きを見た上で、対策を講じる必要がある。そしてそれは、日本側イベンターおよびプロモーターだけではなく、日本市場で利益を得たい海外のアーティスト・マネージメント会社と手を取り合ってやるべきことであろう。

【山野車輪】

(やまの・しゃりん)漫画家・ジャパメタ評論家。1971年生まれ。『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)シリーズが累計100万部突破。ヘビメタマニアとしても有名。最新刊は『ジャパメタの逆襲』(扶桑社新書)

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Source: Ameba News

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