以前の記事で、コミュニケーションソフトウェア「Secound Life(セカンドライフ)」 についてお伝えした。これは2007年頃から日本で注目を集め、企業が参入して盛り上げようとしていたサービスである。

しかし注目を集めたのはほんの少しの間で、アッという間に話題性は失われ、多くの人のなかで思い出へと変化してしまった代物だ。実は私(佐藤)も忘れていた人物のひとりであり、不意に思い出してみたものの、その本質を掴むに至っていなかった。

最近になって、古参ユーザーの1人から接触を受け、そもそも「セカンドライフとは何か?」の教えを受けたので、詳しくお伝えしたいと思う。

・根本的な誤解

本稿を執筆するに当たって、ミスターX氏は匿名を条件に取材に応じてくれた。ミスターX氏本人と、彼と同じく古くからセカンドライフを利用している友人たちとの解説を元に、セカンドライフの本質と現状について述べていきたい。

まず最初に、ほとんどの人が「セカンドライフ」と聞いただけで、懐かしいと感じるはずである。人によっては知らない可能性もある。すでにオワコン(終わったコンテンツ)と思われているといっても過言ではない。

実際はどれだけのユーザーが利用しているのかといえば、ミスターX氏の勧めてくれたブラウザ「Firestorm」で確認すると、同時接続数は世界で概ね3万人前後だ。

セカンドライフの情報掲示版「Teleport Hub」に導入されているアクセス解析(FlagCounter)によると、世界のユーザー分布は最多のアメリカで20.6パーセント、日本は5.1パーセントとなっている。

過疎化が進んでいると考えられているものの、日本では他のサービスの終了や独自のコミュニティが活発化することによってユーザーが流入しており、世界的にみると近年はユーザー数がジワジワと増えているという。

・カクカクポリゴンは昔の話

グラフィックについても、昔ながらのカクカクの3Dグラフィックではない。セカンドライフは、外部の3次元CADソフトウェアなどで描かれたデータを持ち込むことができる。これによって、複雑なオブジェクトやアバター、アバターの衣服などが表現可能だ。

古臭いカクカクポリゴンははるか昔の話であり、現在は多くのクリエーターが数多くのSIM (街)をセカンドライフ上に展開している。美しく作り上げられたSIMは、それ自体がアートといっても過言ではないだろう。

緻密に作り上げられた素晴らしいSIMについては、また別の機会に紹介したいと思う。

・自由すぎるがゆえ

セカンドライフのさらなる特徴は、ユーザーが制作したオブジェクトはすべて販売できること。アバターの外観や衣服、動的なコンテンツやテクスチャ・サウンド・スクリプトなどあらゆるものを販売することが、資格も追加料金もなしで可能だ。また、無償で提供すること(「フリービー」と呼ばれる)も出来る。

「コミュニティ・スタンダード(別名ビッグ6)」に反しない限り、何をやっても自由。何でもできる仮想空間と言っていいだろう。

・地図もガイドもなく旅に出る

しかしながら、自由すぎる空間であるがゆえに、それが仇となることも。というのも、実際に利用してみると、何をしたらいいのか全然わからない。どこに行くべきかもわからないし、どこに行けば人に会えるのかもわからない。そもそも友達が利用していれば、その友達に会いに行くという目的ができるが、1人で利用していたら会うべき人物がいないのである。

ガイドらしいガイドは最初のチュートリアルだけで、あとは仮想世界に投げ出されたような状態になってしまった。極端な例えをするなら、地図も旅行ガイドももたずに予備知識ゼロの異国を旅するようなものだ。英語でコミュニケーションを取れれば、人に聞くという手段もあるが、英語を理解できなければ、旅の始まりで詰んでしまう。

そんな状態だった私は、セカンドライフに入るやいなや、20歳の外国人男性に「45歳wwwww」とバカにされるに至った訳だが……。

・セカンドライフの現状

どうしてこうなってしまったのだろうか? ミスターX氏に大まかな経緯を伺った。

佐藤「とても自由な世界のはずなのに、どうしてこんなに初心者に優しくない環境になってしまったんでしょうか?」

ミスターX「2007年のセカンドライフバブルの当時、運営会社のリンデンラボには、唯一日本語が通じるスタッフがいました。その当時は、問い合わせ窓口として機能していたんです。

しかし、セカンドライフに参入していた日本企業は、マネタイズが難しいと判断すると撤退し、それ以降は日本人コミュニティが衰退していき、その窓口だった担当者もいなくなって、現在に至ります。

公式に日本語のヘルプぺージはなく、日本人向けの公式サポートもなく、結果として現在の状況が続いています。英語がわかる人は、英語のサポートページを見るなり、外国人に尋ねるなりできるんですけどね。英語の話せない日本の初心者には、とっつきにくいものになってしまいました」

佐藤「では、自力で英語のサイトを翻訳するか、英語を勉強して外国人とコミュニケーションをとる道しかないんですか?」

ミスターX「実は、セカンドライフ内に「ジャパン広場」という常駐のサポートスタッフがいる支援施設があります。リンデンラボから認可を受けた施設で、日本人なら最初にそこに行くべき場所と言っていいでしょう。

そのほかに有志が運営する「メルティングドッツ サポートセンター」や「SL Utopia」、「Beginner Center」など、新規ユーザーが参加しやすい環境を、古参ユーザーが用意している現状があります」

・ライブやイベント、不動産レンタルなど

佐藤「では、手ぶらでいきなり世界に入るよりも、ある程度情報収集してから参加する術はあると」

ミスターX「そうですね。情報収集に関していえば、セカンドライフで日本人が運営する施設やイベントに関する情報が集まる「すりんく」も参考になるかと思います。ここでは、カフェやバー、クラブやアトラクション、そのほかSIMに関する情報、そしてライブやダンスイベントなどに関する情報も得ることができます」

佐藤「え! ライブとかやってるんですか」

ミスターX「はい。結構頻繁に行われています。そのほか不動産情報などもあります」

佐藤「不動産?」

ミスターX「ええ、自分が借りた土地を貸し出すことができるんで、同じ興味や趣味を持つ人が集まるように、貸し出す人もいますね」

佐藤「それらのことが、今の人にはまったくと言っていいほど知られてないですよね」

ミスターX「やはり、サポート体制ができていないことが理由のひとつにあると思います。そのほかにある程度、PCのマシンスペックを要するんですよね。これまで長い時間をかけて、ユーザーが膨大な量のデータを持ち込み、おのおののSIMを作ってきています。

それらをスムーズに表示させるには、それなりのスペックのPCでなければなりません。そうでなければ、作りこまれた美しい景色を見ることさえできません。

セカンドライフの仕組み自体も約15年前に開発されたままのもので、改善されないことに不満を抱く人たちもいます。しかし、何の制限もなく自由にできたからこそ、それぞれのSIMは独自の世界を表現できた訳で。

もしも低いスペックのPCでも快適に世界を表示できるようにしようと思ったら、ある種の制約が必要になるので、セカンドライフ最大の魅力「自由度」は損なわれるでしょうねえ」

佐藤「悩ましいところですね」

・VRchat、clusterと比較されるが

近年よく、セカンドライフの比較対象として、引き合いに出されるサービスがある。「cluster(クラスター)」と「VRchat」だ。クラスターは、仮想空間でイベントを開催したりミーティングを行うなど、コミュニケーションに特化したサービスである。

一方のVRchatはどちらかといえば、セカンドライフ寄りの側面を持ち、アバターや空間(ワールドと呼ぶ)を自ら作ることができる。

ミスターX氏に言わせれば、それらは「(セカンドライフで)10年前からやっていること」とのこと。なおかつ、いずれも自由度においてはセカンドライフに劣ることから、既存のユーザーがそれらに流れることはほぼないという。

とはいえ、ミスターX氏はこうも言う。

ミスターX「これらのサービスは目的が明白で、しかもセカンドライフに比べれば、参加しやすくできています。とくに、クラスターはシンプルなポリゴンのアバターが決まったスペースで、他のユーザーとコミュニケーションするだけなので、軽くて快適なソフトを提供しています。それだけでも十分にセカンドライフにはない強みと言えるのではないでしょうか」

・早すぎた新世界

もしかしたら、セカンドライフは誕生が早すぎてしまったのではないだろうか。運営を開始したのは、今から15年前の2003年4月である。日本で一大ブームとなった2007年から10年を経て、その当時から参加していた開拓民たちは、この世界を途方もない領域にまで発展させている。

私は現在のセカンドライフを、ロバート・チャールズ・ウィルスン著のSF小説『時間封鎖』3部作に出てきた、“アーチの向こうの新世界” のように感じる。セカンドライフに関する情報が不足した現状は、まさに未知なる領域なのだ。

快適利用するには多少の負担を伴うが、その先には未知なる世界が広がっている。おそらく現在のセカンドライフには、いわゆるネットサービスのセオリーは存在せず、誰もが思ったように過ごすことができる。ただし明確な目的は指示されておらず、人によっては不自由に感じるのかもしれない。

さて、今回はミスターX氏にセカンドライフの現状について聞くことができた。次の機会には、実際にセカンドライフの世界をミスターX氏に案内してもらおうと考えている。はたして、何が待ち受けているのだろうか。あなたはその目で見ることになるだろう……。

参考リンク:SecoundLifeFlagCounter(英語)、teleporthub(英語)
取材協力:ミスターX
Report:佐藤英典


Source: ロケットニュース24

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