東京国立博物館とフィラデルフィア美術館交流企画特別展として開催中の『マルセル・デュシャンと日本美術』展。第1部「デュシャン 人と作品」と、第2部「デュシャンの向こうに日本が見える。」の2部構成で、デュシャンの創作活動の足跡をたどるとともに日本美術との共通点を探る、ユニークな展覧会だ。

マルセル・デュシャン(1887〜1968)は、20世紀の美術にもっとも影響を与えたと言われるフランス出身の芸術家。彼の代表作《泉》は、男性用小便器に偽名のサインを書き加えた作品で、「芸術は唯一無二の独創性と創造性を持つもの」という伝統的な西洋芸術の概念を覆し、「芸術は芸術家によって定義されるもの」という新しい思考を生み出したことで知られている。

そんなデュシャンの世界的コレクションを誇るフィラデルフィア美術館から、油彩画、「レディメイド」と言われる既製品を用いたオブジェ作品、関連資料・写真など152件が来日。第1部では、これらのコレクションを通してデュシャンの芸術家人生を4つの章により時系列にたどっていく。

第1章では、初期の風景画や肖像画から、デュシャンの名がアメリカで広く知れ渡るきっかけとなった《階段を降りる裸体 No.2》まで、画家としてのデュシャンの才能が紹介される。
第2章では、25歳で絵画の制作を放棄したデュシャンが新たに挑戦した創作活動を作品と写真でたどる。この時期、デュシャンは「レディメイド」作品や、通称「大ガラス」として知られる作品を構想。鑑賞者に思考を促す作品を発表して新たな道を切り開いた。

続く第3章では、女性人格やチェス・プレイヤーをはじめ、デュシャンの多彩でユニークな活動を紹介。34歳で芸術家からチェス・プレイヤーに転向するとしたデュシャンは、本格的な作品創作をほとんど行わなくなるが、「ローズ・セラヴィ」という女性人格を生み出してダジャレや語呂遊びなど言葉の実験を試みたり、遠近法や視覚に関する研究に基づいた機械的な仕掛けに取り組んだり、自身の作品をミニチュア化してトランクに詰めた携帯用美術館を生み出すなど、多様な活動に没頭していたことを、その作品や関連資料を通して紹介する。

最後の第4章は《遺作》に注目。デュシャンが20年以上、誰にも言わずに密かに制作してきた《遺作》は、彼の死後に残されたメモを基に組み立てられ、フィラデルフィア美術館に常設展示されている。ここでは《遺作》の映像や、メモ・文書類、《遺作》の一部となったオブジェなどの展示を通して、作品を追体験できるようになっている。

以上、会場の大部分を占める第1部でデュシャンの創作活動を概観したうえで、続く第2部『マルセル・デュシャンと日本美術』では、デュシャンの創作活動にちなんだ5つのテーマによって選出された日本美術の名品がひと部屋に展開。

400年前に日常の身近なものに価値を持たせた千利休《竹一重切花入》、役者の素顔を暴くように描いた写楽の浮世絵、時間の経過を描写した絵巻物、芸術と道具が渾然一体となった作品などが紹介される。
こうして見ると、日本の伝統的な美の中に西洋とは異なる独自の価値観や、既成概念を覆す革新性など、デュシャンの概念と共通する点も見えてくる。デュシャンの創作活動、そして日本美術のあり方を通して、「芸術とは何か?」という問いを思考する楽しみを味わってみてはいかがだろうか。

【開催情報】
『マルセル・デュシャンと日本美術』
12月9日(日)まで東京国立博物館にて開催

【関連リンク】
マルセル・デュシャンと日本美術
Source: ぴあ映画生活

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